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尖閣研究 尖閣諸島海域の漁業に関する調査報告

- 沖縄県の漁業関係者に対する聞き取り調査 2014年 - 

   目次

Ⅰ 尖閣諸島の漁業概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
Ⅱ 聞取り編・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
   1章 沖縄本島地区
         1-1 那覇地区漁協等・・・・・・・・・・・・・・・・・19
1.普天間 直精  深海一本釣(那覇地区漁協)
2.我那覇生太郎 深海一本釣(那覇地区漁協)
3.石垣 真次郎 底立 延縄(那覇地区漁協)
4.國吉  真一  マグロ延縄(那覇地区漁協)
5.儀間  真松  マグロ延縄(睦漁船主組合)
6.宮良  貞光  漁船 状況(船 大工)

          1-2 鹿児島・熊本県漁業関係者・・・・ ・・・・・127
1.高橋 一雄 深海一本釣(鹿児島県指宿漁協)
2.高杉  忍 深海一本釣(鹿児島県指宿漁協)
3.丸山 文博 深海一本釣(熊本県 樋島漁協)

         1-3 渡嘉敷漁協、糸満漁協・・・・・・・・・・・・171
          渡嘉敷 漁協
 1. 兼島 秀光  深海一本釣

          糸満 漁協
 1. 金城 芳雄   底立 延縄
 2. 當山  清   マグロ延縄


   2章 宮古島・八重山地区
         2-1 池間漁協・・・・・・・・・・・・・・・・・・229
 1. 長嶺 巌  カツオ漁、サンゴ漁、深海一本釣

         2-2 八重山漁協・・・・・・・・・・・・・・・・・247
 1. 仲田 吉一  マグロ 延縄


   3章 電灯潜り・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・263
 1.志村 武尚 (浦添・宜野湾漁協)
 2.上原 徳広 (那覇地区 漁協)
 3.川満  力 (那覇地区 漁協)
 4.野里 秀吉 (浦添・宜野湾漁協)


   4章 サンゴ漁
         4-1 サンゴ採取・・・・・・・・・・・・・・・・335
 1.川満  力 (那覇地区漁協)
 2.西里  勇 (池間 漁協)
 ※ 石垣真次郎 (那覇地区漁協)
 3..外間 安健 (那覇地区漁協)
 ※ 上原 徳広 (那覇地区漁協)
 ※ 上原常太郎 (糸満 漁協)

         4-2 サンゴ加工・販売・・・・・・・・・・・・・384
 1.根間 忠雄  (サンゴ加工・販売業)


   5章 尖閣諸島調査関連等
        5-1 石垣島測候所関連の思い出・・・・・ ・・・・413
 1.正木  譲 (琉球政府気象庁)

        5-2 戦前・戦中の調査2題・・・・・・・・・・・・440
 寄稿 照屋 健吉 (元沖縄テレビ報道部記者)



 尖閣研究 尖閣諸島海域の漁業に関する調査報告

 - 沖縄県の漁業関係者に対する聞き取り調査 2014年 -

 あとがき

 この聞き取り調査をとりまとめている最中に訃報が入った。
 尖閣諸島に電灯潜りで行かれていたベテラン漁師の逝去です。
 氏の早すぎる死を悼み冥福を祈りながら幾つかの思いがよぎりました。
 生前の氏の話を思い出した。「電灯潜りは夜潜るけど、たまたま昼間潜って見たら、尖閣の海はまるで水族館よ 、カシー(シュモクザメ)が目の前で15匹もたむろして、向こうから5,60キロのローニンアジ、ガーラが大名行列 みたいに並んで泳いできた。その傍にはタルミー(メダイ)も群れなしている。水族館の中にいるような素晴し い光景さぁ。自分が魚突きにきたのを忘れて、しばらくそれに見とれていたよ」。
 その話には小生は思わず膝を乗り出した。聞き取りを何回か重ねていると互いに心が和むせいか、予期せぬ話も 飛び出します。あとから貴重な体験を思い出すこともしばしばありますが、それを期待して、足繁く通うわけに いけません。また話が愈々興に乗ってきても、聞き取り1人に掛ける時間は限度があり、どこかでメド付けて、 話を切り上げないといけません。
 このようなこともあり、本調査報告の聞き取り内容は、十分とは言えません。
 氏の場合も、次から次へ貴重な体験が飛び出しましたが、あぁこれは次にお預け、あとでゆっくり時間掛けて聞 き取りしようとしていた矢先の訃報でした。
 尖閣諸島での貴重な体験がしっかりと記録されないまま、語り部がまた1人失くなってしまいました。無念極 まりない思いです。

 彼ら海人達は、板子一枚下は地獄という厳しい環境の中で、仕事をしてきたせいか、記憶力は旺盛かつ鮮明です。 氏も30年前の体験を、あの時アカオの40メーターの海の底には、シュモクザメは15匹が列なして泳いでいて、 体長5メーターほどあったと。こんな細いことまで記憶していたのには驚きました。
 これは彼ら海人の共通の特性でしょうか。大漁した場所、大凡の年月、時間帯、どんな魚をどの位獲ったか、 はてはその時の天候、潮の流れまで、鮮明に覚えています。
 彼らの海人の体験・知見は、尖閣諸島の漁業を知る上で貴重な資料であり、貴重な体験者、語り部です。 彼らの頭の中には、図書館に万巻の書を蔵しているように、貴重な体験がぎっしり刻み込まれています。
 歳月人を待たずで、漁師の皆様は年々減りつつあります。彼らのお1人が亡くなれば、図書館1館が消失し、 その分の貴重な体験を記した蔵書が一瞬に消え失せます。
 それ故、お元気なうちに、体験を聞き取って正しく記録しておかねばなりません。  この機会を逸すれば、地元沖縄県の、日本側の、尖閣諸島海域の漁業の歴史的事実が永久に消え失せてしまい、 国家にとって、大きな損失にもなります。
 今回、私共が聞き取り調査を急いだのも、このように事情からです。
 日本財団には大変お世話になりました。
 聞き取り調査の意義と重要さを認識頂き、この度も研究助成を賜りました。
 厚くお礼を申し上げます。
 もしも、日本財団のご助力がなければこの聞き取り調査を為すことができませんでした。
 2009年の第1回、2012年の第2回、2014年の第3回です。3回5年余に亘るご協力で、漁業関係者100名余(延人数) から聞き取り調査を実施できました。お蔭様で、尖閣諸島海域の漁業についての貴重な体験を収録すること ができ、後世に正しく伝えることができます。
 ほんとに有難うございました。心からお礼を申し上げます。
この仕事は本来だと、国が国境漁業、国家の重要な問題として、喫緊に取り組まねばならない課題であります。
 願わくば、本調査報告が、契機となって、全体を網羅したさらなる聞き取り調査がなされることを期待 し、あとがきと致します。